波崎事件資料


【1.保坂展人衆議院議員の森山真弓法務大臣への質問】
2002年11月27日 衆議院法務委員会

保坂議員:もう一人、今度は波崎事件、冨山さんという死刑囚の問題についても、この際伺いたいと思います。
 「死刑廃止論」を著した方で有名な最高裁判事だった団藤重光さんがインタビューに答えて言っているんです。この波崎事件の上告棄却のときにいろいろ迷った、裁判長が上告棄却の宣告をして退廷をしかけたときに、傍聴席から人殺しという罵声を浴びた、やはり、本当は無実だったのかもしれないと、私はこの瞬問決定的な死刑廃止論者になったということを、今から10年前にインタビューに答えていらっしゃるんです。
 この方は、冤罪を訴えています。今、年齢は85歳で、東京拘置所にいらっしゃいます。そして、高血圧、動脈硬化、腎障害、排尿困難、目もほとんど見えなくなってきている。面会のときは車いすでようやく来るのだが、食事もなかなかとれない。最近の手紙では、呼吸不全、そして、おなかが異常に膨張して尋常じゃありませんということを訴えられているんですね。85歳ですよ。全身あちこち異状が出てきて、やはり、きちっと病院に移して治療に専念させるべきだというふうに思います。
 国連決議で、89年に、死刑の宣告または執行が行われない最高年齢、つまり、死刑確定囚であってもこういう国連決議があるんですが、最高年齢というのは日本の場合決めておりませんよね。85歳にしてこういう状態で、目も見えない、 そして身体的に非常に弱っているという方に緊急救済措置をとる必要があると思いますが、法務大臣、いかがですか。
森山法務大臣:御本人の病状に応じまして、拘置所で適切に判断すると思います。
保坂議員:適切な判断がなかなか矯正施設の中で行われないんですね。これは、今矯正局長も言われたように、そこまでのことができないシステムになっているんですよ。
 だから、例えば85歳にしてそれだけ異状を訴えても、確かに拘置所の中の医療的な施設はありますよ。ただ、例えば歯医者にしても、これは抜くしかないんですね。全部抜いちゃう。入れ歯とかそういうことはなかなかできないというふうに聞いています。事は、身体的に大変弱られているということです。
 今、袴田巌さんの話をしました。そして、冨山さんの話をしました。私ども国会議員がきちっとその状態を調査すると いうことについては、大臣の見解はいかがでしょうか。私どもが、あるいは精神科医を伴って、あるいは内科医だとかそういうお医者さんとともに、今どういう状況にあるのか。拘置所は一生懸命やろ うとしているというふうに報告を上げてくるでしょう。しかし、もう一回客観的に見るということが必要だと思うんですが、いかがでしょうか、大臣。これは政治判断なので、ちょっと大臣に一言お願 いしたい。
森山法務大臣:今委員がおっしゃいましたことを施設の長に伝えまして、適切に判断するよう指示したいと思います。

2003年2月17日 衆議院予算委員会

保坂議員:今、東京拘置所に85歳の、冤罪を訴えておられる冨山常喜さんという85歳になっている死刑確定囚が、容体がどんどん悪くなって、森山大臣にも昨年尋ねましたけれども、そのときは車いす、今はもっと悪くなって、透析治療を受けている。しかし、透析の効果が全然出ていないという報告があって、これはもう獄死直前の状態だというふうに医療関係者は見ています。
 弁護団は、監獄法四十三条に基づいて病院に移送してほしいという申し立てをしましたが、この必要なしというふうにけられています。
 もう一回、人権という視点に立ち、そして、東京拘置所の中にどういう医療体制があるのか我々わかりません。医者が何人いるのか、集中治療室では24時間診ているのか、透析の機械がどの程度のレベルのものなのかわかりません。だから、しっかりと調査をして、もうこれは刻一刻と迫っているんです、この方の命は。しっかり対応していただきたい。答弁をお願いします。
森山法務大臣:おっしゃる事案につきま しては、調査いたしまして対応したいと思います。


【2.拘置所の発表】

法曹記者クラブ 御中

   死刑確定者の死亡について
 当所に収容中の死刑確定者1名が、本日午前1時ころ、巡回中の職員の問いかけに反応しないなど異常が認められたため、直ちに救命措置を講じましたが、午前1時48分、死亡が確認されました。
 死亡者本人については、これまで高血圧症及び慢性腎不全のため、病舎に収容して人工透析等を行い経過を観察していましたところ、次第に全身衰弱が進み、本日死亡に至りましたが、これまでの経過から、慢性腎不全による死亡と考えられます。
 なお、本件については、東京地方検察庁等に通報し、本日午前4時20分から司法検視が実施されました。
平成15年9月3日 東京拘置所


【3.参考文献】

足立東著『情況証拠―「波崎事件」無罪の証明』朝日新聞社 1990。
木下信男『裁判官の犯罪』樹花舎 2001。
安斎夘平「闇の時間―波崎事件研究」『月刊・状況と主体』谷沢書房
民権人権確立委員会編『冤罪告発 波崎事件―無実を叫ぶ死刑囚冨山常喜』谷沢書房、1977。
庄司宏(再審弁護人)「可能性と推測による死刑判決−波崎事件で問われる法の根幹−」『無実を叫ぶ死刑囚 波崎事件』波崎事件対策連絡会議編

Home
inserted by FC2 system