死刑廃止条約


死刑廃止にむけての市民的および政治的権利に関する国際規約第二選択議定書
                                 (1989年12月15日)
 本議定書の締約国は、
 死刑の廃止が人問の尊敬の高揚と人権の一層の増進に寄与すると堅く信じ、
 1948年12月10日に採択された世界人権宣言第三条および1966年12月16日に採択された市民的および政治的権利に関する国際規約第六条を想い起こし、
 市民的および政治的権利に関する国際規約第六条が、死刑の廃止が望ましいことを強力に勧めて死刑廃止に言及していることに留意し、
 死刑廃止のためのあらゆる措置は、生命に対する権利の享受の進展であると考えられるべきであると確信し、
 ここに死刑廃止にむけての国際的な誓約を行うことを求め、
 次の通り協定した。
第一条 1 本選択議定書の締約国の管轄下にある者は、何人も処刑されることはない。
2 各締約国は、その管轄下において死刑廃止のためのあらゆる必要な措置を講じなければならない。
第二条 1 批准または加入の際になされた、戦時に犯された軍事的性格を有する極めて重大な罪に対する有罪判決に従い、戦時に死刑を適用する規定に関する留保を除き、本選択議定書に対しいかなる留保も付することも許されない。
2 かかる留保を付そうとする締約国は、批准または加入の際に、戦時に適用される国内法の関連する規定を国際連合事務総長に通報するものとする。
3 かかる留保を付そうとする締約国は、その領域における戦争状態の開始または終了を国際連合事務総長に通告するものとする。
第三条 本選択議定書の締約国は、本議定書の実施のために講じることとした措置に関する情報を、規約第四〇条の規定に従って人権委員会に提出する報告書に記入しなければ ならない。
第四条 規約第四一条の宣言を行った規約の締約国に関しては、当該締約国が批准または加入の際に自国につき認めない旨の宣言を行わない限り、この規約に基づく義務を他の締約国が履行していない旨を主張するいずれかの締約国からの通報を人権委員会が受理しかつ審議する権限は、本議定書の規定に及ぶものとする。
第五条 1966年12月28日に採択された市民的および政治的権利に関する国際規約についての(第一)選択議定書の締約国に関しては、当該締約国が本議定書の批准または加入の際に自国につき認めない旨の宣言を行わない限り、その管轄下にある個人からの通報を人権委員会が受理しかつ審議する権限は、本議定書の規定に及ぶものとする。
第六条 1 本議定書の規定は、規約の追加条文とみなされ、かつ適用されるものとする。
2 本議定書第二条に定める留保の可能性を侵害しない限り、本議定書第一条第一項で保される権利は、規約第四条による例外によって侵されることはないものとする。
第七条 1 本議定書は、規約に署名したすべての国による署名のために開放される。
2 本議定書は、規約を批准しまたは規約に加入したすべての国により批准されなければならない。批准書は、国際連合事務総長に寄託するものとする。
3 本議定書は、規約を批准しまたは規約に加入した国による加入のために開放される。
4 加入は、国際連合事務総長に加入書を寄託することによって効力を生じる。
5 国際連合事務総長は、本議定書に署名しまたは加入したすべての国に対し、批准書または加入書の寄託を通知する。
第八条 1 本議定書は、10番目の批准書または加入書が国際連合事務総長に寄託された日の三箇月後に効力を生じる。
2 10番目の批准書または加入書の寄託後に本議定書を批准しまたはこれに加入する国については、本議定書は、その国の批准書または加入書が寄託された日の三箇月後に効力を生じる。
第九条 本議定書の規定は、いかなる制限または例外もなしに、連邦国家のすべての地域について適用する。
第十条 国際連合事務総長は、規約第四八条第一項に掲げるすべての国に次の事項を通報するものとする。
(a)本議定書第二条による留保、通報および通告
(b)本議定書第四条または第五条による宣言
(c)本議定書第七条による署名、批准および加入
(d)本議定書第八条による本議定書の効力発生の日
第十一条 1 本議定書は、アラビア語、中国語、英語、フランス語、ロシア語およびスペイン語による本文をひとしく正文とし、国際連合に寄託される。
2 国際連合事務総長は、本議定書の認証騰本を規約第四八条に掲げるすべての国に送付する。


【注】 本議定書は通称「死刑廃止条約」と呼ばれているものです。国連総会で、賛成59国 反対26国 棄権47カ国、で採択されました。日本は、国民の大多数が死刑制度を支持しているという理由で、反対票を投じました。
 なお日本では、1989年11月からしばらく死刑執行の空白期間が続きましたが、1993年3月後藤田法相の就任中、3年4ヶ月ぶりに死刑が執行されました。


【参考】
 ・世界人権宣言 第三条
  すべて人は、生命、自由及び身体の安全に対する権利を有する。
 
 ・市民的及び政治的権利に関する国際規約(通称:自由権規約) 第六条
  1. すべての人間は、生命に対する固有の権利を有する。この権利は、法律によって保護される。何人も、恣意的にその生命を奪われない。
  2. 死刑を廃止していない国においては、死刑は、犯罪が行われたときに効力を有しており、かつ、この規約の規定及び集団殺害犯罪の防止及び処罰に関する条約の規定に抵触しない法律により、最も重大な犯罪についてのみ科することができる。この刑罰は、権限のある裁判所が言い渡した確定判決によってのみ執行することができる。
  3. 生命の剥(はく)奪が集団殺害犯罪を構成する場合には、この条のいかなる規定も、この規約の締結国が集団殺害犯罪の防止及び処罰に関する条約の規定に基づいて負う義務を方法のいかんを問わず免れることを許すものではないと了解する。
  4. 死刑を言い渡されたいかなる者も、特赦又は減刑を求める権利を有する。死刑に対する大赦、特赦又は減刑は、すべての場合に与えることができる。
  5. 死刑は、18歳未満の者が行った犯罪について科してはならず、また、妊娠中の女子に対して執行してはならない。
  6. この条のいかなる規定も、この規約の締結国により死刑の廃止を遅らせ又は妨げるために援用されてはならない。

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